出産するまで
赤ちゃんを産むために医療施設で処置を受けることになります。出産後は、すぐに赤ちゃんとお別れをする方法を選択しなければなりません。非常に短い時間で多くの重大な決断をすることになります。この時期の赤ちゃんを産む方法は、医療的に「赤ちゃんを母体外へ出してあげるお手伝い(処置)」と呼びます。
待機的管理法
この時期に赤ちゃんが子宮の中で亡くなった時、多くの場合は、その後、一定の期間(2週間以内で約90%)が経過すると、自然に赤ちゃんとその他の組織が子宮外に排出されます。手術を計画的に行わず、定期的に受診をしながら経過をみて、自然に生まれてくることを待つ方法を選択することもできます。今後、どのように経過をみていくのか、自宅での過ごし方に不安があれば、事前に医療者ときちんと相談しておきましょう。
赤ちゃんが生まれてくる際、ほとんどの場合は通常の生理痛よりやや強めの腹痛と、生理よりやや多めの出血がみられます(目安として知っておきましょう)。妊娠週数が進んでいる流産の場合は特に、激しい腹痛や大量の出血がみられることがあります。自宅待機している際に、我慢できないほどの腹痛や大量出血(生理の時より大幅に多い)がみられた際は、すぐに病院に相談しましょう。
腹痛を便意だと思い込み、トイレに座っていたら出血とともに赤ちゃんが生まれてくることもあります。もしも、そのようなことが起った際は、慌てずに排出されたもの(血の塊のように見えるもの、膜のようなものなど)を可能な限り回収し、医療機関に持参し確認してもらいましょう。
手術(子宮内容除去術)
自然排出されない場合、もしくは計画的に手術日を決めて行う手術です。子宮の中にいる赤ちゃんとその他の組織を取り出す手術を行います。大まかな流れは以下の通りです。
手術前準備のための処置(子宮頸管拡張)
初めて出産する方、前回帝王切開分娩の場合は、子宮口が開くまでに時間がかかります。そのため、赤ちゃんや胎盤を排出させてあげやすいように、子宮の出口(子宮口, しきゅうこう)を軟らかくし拡げるための処置をおこないます。子宮口に清潔なラミナリア稈、ダイラパンなどの清潔な医療機器を挿入します。
※出産経験の有無や子宮頸管の状況に応じて、前処置の要否について判断します
※ラミナリア稈とは?
昆布の茎根を主原料として作られた棒状の医療機器。子宮口に挿入することで、頸管からの分泌液を吸収し、2~3倍ほどの大きさに時間をかけて膨らみます。この膨らむ原理を利用して、子宮口の準備を整えます。

※ダイラパンとは?
親水性のポリマーを使用した医療機器。子宮口に挿入することで、頸管からの分泌液を吸収し、放射状に膨張します。この膨らむ原理を利用して、子宮口の準備を整えます。
ラミナリアやダイラパンを挿入した刺激によって、子宮が収縮して下腹部が重たく感じたり、生理痛のような痛みを感じることがあります。また、これらの処置は、激しい痛みや違和感を伴うことが多くあります。挿入後の待機時間も痛みに耐え続けることは辛いため、我慢せずに、鎮痛剤を処方してもらえるよう医療者に相談しましょう。医療機器はもちろん滅菌処理されていますが、体内に人工物を挿入することによる感染リスクへの対処として、抗生物質が処方されます。渡されたお薬の内容についてもしっかり把握し内服しましょう。
流産手術(子宮内容除去術)
子宮口を医療器械で拡げて、子宮の中から赤ちゃんや胎盤を取り出す手術。滅菌された医療器具もしくは吸引器をもちいて、赤ちゃんやその他の組織を取り出します。手術は静脈麻酔をもちいて、眠っている間に行いますので、手術中の痛みの心配はありません。
※どのような手術であっても、術後合併症のリスクが伴います。
医療者はこれらを患者に事前に詳しく丁寧に説明し、理解・納得の上で同意を得て手術を行う責務があります。ご不明点については、遠慮なく医療者にご確認下さい。
初期流産経験者の声
初期流産後、情報提供はなにもなかった。次どうしましょう?で終わってしまう。なにもわからなかったし、むきあえなかった。心のケアは何もない。次どうします?といわれて、今それをいうの?なんて答えたらいいのかわからなかった。
悲しんでいいことを伝えてほしかった。
お話会の場所なども紹介してもらえてたら、また違っていたと思う。
不妊治療をしている時期は、母子手帳をもらいに行ってダメだったらそれも悲しい。だからもらいに行かないこともあったけど、何も残らないのも悲しい。でも母子手帳をもらいにいくと、生きている前提で役所から連絡がくるのが辛くなるので、連絡はしないでほしいことを自分で一方いれなければと考えた。
※妊娠届け出したら、、、、全例連携をとってほしい。
初期流産はよくある事で、とくべつなことではないこともつたえつつ。それだけでおわらずに、その先のグリーフについても少しだけでも情報提供してほしい。妊娠週数に関係なく悲しみがともなうこと。悲しんでいいこと。悲しいのも当たり前だということ。大切な我が子とお別れをしたお母さんお父さんなんだということを説明してほしい。お話できる場所があることを教えてほしい。
医療職の仲間たちは、統計・確率論で語ってはげましてくれるけど、ひびかない。そういう問題じゃないしと思った。心配をしている自分に、〇〇%の確率で大丈夫だとか数字で語ってくれるんだけど、絶対とかないし。なくなった子の話をしていなかったので、次子妊娠時に心配なことを伝えたら、心配しすぎやろうと思われたり。
赤ちゃんのためにできること
エコー写真を保管する
母子健康手帳を受け取っている場合、返却しなければならない決まりはありません。
赤ちゃんの生きた証として保管したい方は、破棄せずそのまま大切に保管ください。
もし、今は目にするのが辛いと思っている方も、いつか取り戻したいと思っても、一度、返却してしまうと破棄されてしまうので手元に戻すことができません。今は見れなくても、ご家族に保管しておいてもらったり、引き出しの奥にそっとしまっておくことでもよいので、その方法はお母さん・お父さん2人で相談してきめるとよいでしょう。
こどもの名前をつける
男の子か女の子かもわからなかったけれど、毎日向き合う中で、きっと性別は女の子だったんだろうなと思い、名前をつけることができた。流産後、しばらくたってからだったけれど、名前で呼んであげることができるようになって、より身近に感じられるようになった。
カルテ開示
保存期間には決まりがありますので、破棄されてしまう前にカルテ開示を希望するのがよいでしょう
<カルテ開示を希望する際の注意点>
カルテの保存期間
◇医師法(昭和23年法律第201号)(抄) 第24条
医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。 2 前項の診療録であつて、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、五年間これを保存しなければならない。
第33条の3 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。 一 第六条第三項、第十八条、第二十条、第二十一条、第二十二条第一項又は第二十四条の規定に違反した者 二~三 (略)
◇保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和32年厚生省令第47号)(抄) 第9条
保険医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から三年間保存しなければならない。ただし、患者の診療録にあつては、その完結の日から五年間とする。
このように医師法によって、診療録(カルテ)は一連の診察が終了した日から5年間保存することが義務付けられています。(カルテ以外の診療に関わる諸記録は3年間の保存が義務づけられている)
※紙カルテ時代に制定された法律ですが、電子カルテにおいても適用されます
カルテ開示を申請する
深い悲しみの中、たったひとりで病院を訪れて、カルテ開示を希望するには、大変なエネルギーを要します。
なぜなら、赤ちゃんとお別れをしたお母さん・お父さんが、病院窓口で「カルテ開示希望」とお伝えした際、病院側から色々な質問を受ける可能性があるためです。
・カルテ開示を希望する理由
・どのような記録の開示を希望するのか、等
お母さん・お父さんは、ただ純粋に、赤ちゃんが生きた証を残したいと願いという明確な理由をお伝えいただくとよいでしょう。
※カルテの保存期間があることだけ、忘れずに覚えておいてください。
※辛いことを思い出しながら事情を説明する必要が生じるかもしれません。1人ではお辛いかもしれないので、誰かご家族と一緒にいくことをおすすめします。
赤ちゃんとのお別れ
早期流産のお別れの苦悩
妊娠がわかったものの、間もなく赤ちゃんの死を告げられた場合、多くのお母さん・お父さんたちが、母子手帳を受け取りに行くことも、赤ちゃんに会うこともできずに、お別れをすることになります。
葬儀も火葬も執り行われず、ご夫婦以外は妊娠していたことも知らない可能性もあり、悲しみを共有できないことが、孤独感を増強する傾向にあります。
妊娠していたことすらも、夢だったのだろうかと。
何が現実なのかもわからないほど赤ちゃんを失った悲しみと衝撃に混乱している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
妊娠期間の長さと、悲しみの深さが比例すると考える人がいたとするならば、想像力が欠如していると私は考えます。
いのちの価値は、生きた時間の長さで測るものではありません。
親が子どもを愛する気持ちは、比較できるものではありません。
早期流産は、「全体の15~20%」、「よくあること」と言われると、こんなことで悲しんではいけないのではないかと、悲しむことも許されないような気持ちになりがちです。
そんなことを思う必要はなく、今、赤ちゃんを亡くして悲しい気持ちを抑えたり堪えたりすることなく、正直に出して、悲しい時は悲しみ、泣きたいときはなくことをおすすめします。
何も赤ちゃんとの思い出を残せなかったと落ち込んでいる方へ
お母さん・お父さんには、赤ちゃんが確かにお腹の中で生きていた証をできるだけ手元に残して欲しいと願っています。
何か手元に残すことができたならと悔やんでいる方がいらっしゃいましたら、妊婦健康診査のために通っていた医療施設へ問い合わせ、超音波(エコー)写真を印刷してもらえないか相談しましょう。
カルテには保存期間がありますので注意しましょう。
カルテ開示に関する注意事項
今、思い出の品として残せるものには限りがあるかもしれませんが、これからお母さん・お父さんが子どものために手作りでプレゼントを贈ることもできます。思い出の品の数は少なくても、お母さんとお父さんが赤ちゃんを大切に想ってくれている気持ちは必ず届くと信じています。
赤ちゃんとの対面について
自然に排出された場合を除き、子宮内容除去術での処置を受けた場合であっても、赤ちゃんに実際に会うことによって、赤ちゃんの存在を感じ、同時に死およびお別れを受止めることができることもあります。
流産手術を受ける前に、お母さん・お父さんがどのような状況であっても、赤ちゃんに会いたいと思う気持ちを伝え、会えるように事前に主治医の先生に相談しておきましょう。
※相談をしても難しい場合もあるかもしれませんが、患者の希望を伝える権利があります。お子さまのために親としてできることを果たせるように願っています。相談だけでもしておくことをお勧めします。